「顕著な普遍的価値」が認められることにより、登録される世界遺産。中でも「世界文化遺産」は、2013年から毎年のように日本の遺産が登録されています。
そんな世界に誇れる世界文化遺産に、なにが登録されているか貴方は知っていますか?
当記事では、日本の世界遺産の中から新しく登録された9つについて紹介します。
トップ画像出典:https://www.photo-ac.com/dl/?p_id=2012257&sz=m&f=1b5e8e2bc43d880491269f4f1986487a
【世界文化遺産】日本銀を産出していた「石見銀山遺跡」
石見銀山遺跡とその文化的景観は、2007年7月に鉱山遺跡としてはアジアで初めて登録された世界文化遺産です。
石見銀山は高品質の銀が採取されることで有名であり、ヨーロッパでは「銀鉱山王国」とも呼ばれていました。
16世紀半ばには、世界の1/3の銀産出量を誇る日本の中でも、銀の大部分を石見銀山が産出していたんです。
石見銀山遺跡は、銀を基軸にした東西世界の文物や文明交流の証であり、伝統的技術による銀産出を証明するなど文化的景観としての価値を持っています。
- 掘る:間歩(まぶ)という坑道で、6つの道具を使用し銀を掘り出していた
- 水を汲みだす:湧き出た水を、木製のポンプを用いて人力で汲みだす
- 空気を送る:坑道の中は空気が悪いため、空気を送っていた
- 運びだす:産出された銀を人力で運びだしていた
本資産は、島根県太田市にあり全16から成り立っています。石見銀山の歴史については、「石見銀山世界遺産センター」にて展示を通して学ぶことが可能です。
また、坑道や銀山によって栄えた武家・商人・職人が暮らしていた武家・町家も観光可能です。
【世界文化遺産】奥州藤原氏浄土思想を元に建築「平泉」
平泉ー仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群は、2011年6月に世界文化遺産に登録されました。
奥州藤原氏が浄土思想のもと、仏国土(浄土)をこの地に再現することを目指して造営しました。建築物群は平泉の財力を反映しており、日本の仏堂や庭園に影響を与えています。
- 中尊寺:藤原氏4代の遺体を安置している
- 毛越寺:浄土庭園とそれらの構成要素である常行堂がある
- 観自在王院跡:阿弥陀如来の極楽浄土を表現している浄土庭園
- 無量光院跡:園池に大小3つの島が空間が構成されており、浄土庭園の発展した形態
- 金鶏山:平泉の空間設計の基準となった信仰の山
本資産は岩手県平泉町にあり、全4から成り立っている世界文化遺産です。
【世界文化遺産】日本の芸術の源泉「富士山」
富士山ー信仰の対象と芸術の源泉は、2013年6月に世界文化遺産に登録されました。富士山は山岳信仰や、葛飾北斎を始めとして多くの芸術作品の題材になったことが評価され世界文化遺産に選ばれました。
なぜ、世界自然遺産ではなく世界文化遺産なのかと疑問に感じる人も多いかと思います。富士山が世界自然遺産に選ばれなかった理由としては、不法投棄などゴミ問題が解決されなかったからです。
そのため、世界自然遺産ではなく世界文化遺産にて登録されました。
- 富士山域
- 富士山本宮浅間大社
- 村山浅間神社
- 山中湖
- 河口湖
- 忍野八海
- 白糸の滝
- 三保の松原など
本資産は、山梨県と静岡県にあり全20から成り立っています。なお、三保の松原は1度除外勧告を受けていました。
しかし、三保の松原が富士山の代表的な景観地であることから構成遺産となりました。三保の松原の有名な作品と言えば、歌川広重の「五十三次名所図会 江尻」です。
【世界文化遺産】日本の近代化のために設立「富岡製糸場」
富岡製糸場と絹産業遺産群は、2014年6月に世界文化遺産に登録されました。富岡製糸場は、生糸の大量生産を実現させた「技術革新」と「技術交流」を評価されています。
当施設の出現により、世界の絹産業の発展と絹消費が拡大していきました。
- 富岡製糸場:明治政府が設営した器械製糸場
- 田島弥平旧宅:蚕の飼育方である「清涼育」を大成させた田島氏の旧宅
- 高山社跡:養蚕教育機関
- 荒船風穴:岩の隙間から噴き出す冷風を用いて蚕の卵を貯蔵
本資産は群馬県富岡市・伊勢崎市・藤岡市・甘楽郡にあり全4から成り立っています。なお、富岡製糸場は当時の姿のまま残っており、繰糸所内部なども見学出来ます。
【世界文化遺産】明治日本の産業革命遺産
「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は、西洋から非西洋の日本へ産業化が移転したことを証言する遺産群として、2015年7月に世界文化遺産に登録されました。
1850年代から1910年の半世紀に渡って西洋の技術が移転してきたものであり、造船や製鉄・製鋼、石炭など重工業分野の産業システムとして構築されています。
- 萩反射炉
- 恵美須ヶ鼻造船所跡
- 松下村塾
- 旧集成館
- 三池炭鉱
- 三角西港など
福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島・山口・岩手・静岡の8県、23の構成資産から成り立っています。その中の代表的な構成遺産の1つが軍艦島です。
軍艦島(端島)は、海底炭鉱によって栄えた島です。かつては人も住んでいましたが、エネルギーが石炭から石油に移行したことにより閉山、島は無人島になりました。
【世界文化遺産】近代建築を定式化「ル・コルビュジエ」
「ル・コルビュジエの建築作品ー近代建築運動への顕著な貢献」は、2016年7月に世界文化遺産に登録されました。
本資産は近代建築五原則を定式化し、近代建築運動に影響を与えた点が評価されています。
- ピロティ
- 屋上庭園
- 自由な間取り(平面)
- 横長の窓(水平連続窓)
- 自由な立体(ファサード)
- 国立西洋美術館
- ポルト・モリト—の集合住宅
- ロンシャンの礼拝堂
- ギエット邸
- クルチェット邸など
本資産は日本を始めとして、フランス・ドイツ・スイス・ベルギー・アルゼンチン・インドの7か国、17の構成資産から成り立っています。
各国に資産があることからも、ル・コルビュジエが近代建築に与えた影響力の大きさが分かりますね。
なお、ル・コルビュジエが日本に残した建築物は国立西洋美術館のみとなっています。美術作品を鑑賞するだけでなく、建築を鑑賞しに行くのも良いですね。
【世界文化遺産】女性禁制の神宿る島「沖ノ島」
「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群は、2017年7月に世界文化遺産に登録されました。
沖ノ島を崇拝する文化的伝統や海上の安全を願う生きた伝統を今日まで継承している点が評価されています。なお、沖ノ島には、4世紀から9世紀の古代祭祀の変遷を示す考古遺跡が残っています。
- 宗像大社沖津宮
- 宗像大社沖津宮遙拝所
- 宗像大社中津宮
- 宗像大社辺津宮
- 奴山古墳群
本資産は、福岡県宗像市・福津市にあり全5つから成り立っています。沖ノ島は古くから女人禁制の島ですが、2017年以降は一般の男性も入島禁止となりました。
沖ノ島の近くまで行きたいという方は、宗像大社沖津宮遙拝所が最も近い位置にあります。
【世界文化遺産】日本の潜伏キリシタンの歴史
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産は、2018年6月に世界文化遺産に登録されました。キリスト教信仰を密かにしていた「隠れキリシタン」の伝統を物語っている点が評価されています。
本資産は密かに信仰を継続するために様々な形で、他の宗教と共生を行っていた集落などで構成されています。
- 原城跡
- 平戸の聖地と集落
- 外海の出津集落
- 黒島の集落
- 大浦天主堂
- 天草の崎津集落など
本資産は、長崎県と熊本県の8市にあり、全11から成り立っています。
【世界文化遺産】古代日本の王の墓群「百舌鳥・古市古墳群」
「百舌鳥(もず)・古市古墳群ー古代日本の墳墓群」は、2019年7月に世界文化遺産に登録されました。
本資産は、土製建築物の技術的到達点を表し、墳墓によって権力を象徴した古代日本の歴史を物語っていると評価されています。
噴長500m近くに達する前方後円墳から20m台のものまで、様々な大きさや形状の古墳群です。
- 反正天皇陵古墳
- 仁徳天皇陵古墳
- 茶山古墳
- はざみ山古墳
- 白鳥陵古墳など
本資産は、大阪府にあり全50の古墳群から成り立っている世界文化遺産です。
日本の世界文化遺産まとめ
日本の世界文化遺産で新しく登録された9つについて紹介しました。世界文化遺産とは、普遍的な価値がある文化遺産の保護を目的としています。
世界文化遺産に訪れることによって、日本の歴史に触れることが出来るでしょう。
下記は、登録名と地域についてまとめたものです。ぜひ、あなたも足を運んでみてはいかでしょうか。
名前 | 地域 | 構成 |
石見銀山遺跡とその文化的景観 | 島根 | 銀山柵内、代官所跡、大森、銀山、宮ノ前 |
平泉ー仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群 | 岩手 | 中尊寺、毛越寺、観自在王院跡、金鶏山 |
富士山ー信仰の対象と芸術の源泉 | 静岡、山梨 | 富士山域、富士山本宮浅間大社、忍野八海 |
富岡製糸場と絹産業遺産群 | 群馬 | 富岡製糸場、田島弥平旧宅、高山社跡 |
明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業 | 福岡、佐賀、長崎、熊本など | 萩反射炉、松下村塾、旧集成館、三池炭鉱 |
ル・コルビュジエの建築作品ー近代建築運動へ顕著な貢献 | 東京 | 国立西洋美術館 |
「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群 | 福岡 | 宗像大社沖津宮、奴山古墳群 |
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産 | 長崎、熊本 | 原城跡、平戸の聖地と集落、大浦天主堂 |
百舌鳥・古市古墳群ー古代日本の墳墓群 | 大阪 | 反正天皇陵古墳、仁徳天皇陵古墳 |