旅の思い出はおみやげと共に

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「換金したお金の残りは……」

自由行動中に訪れた百貨店で、お財布の中身を思い出しながら心の内で呟く。

 

周りの友達が沖縄や北海道に行くなか、私の高校は公立にしては珍しく、修学旅行の行先がマレーシアだった。留学生を受け入れていて、英語に力を入れていて……。県のいくつかの条件を満たした高校のみが、修学旅行の行先として海外が許されていた。

聞き慣れない国。修学旅行の説明を受ける中で、最初に思った感想だ。どの辺りにある国なのか、どの言語が通じるのかなど全く知り得ない。

錫やパーム油がマレーシアの伝統的な産業で、イスラム・中国・インド系が入り混じった多民族国家というということは、修学旅行前に社会科の授業で習っていなければ知り得なかっただろう。それほど、当時は印象のない国であった。

それでも8年たった今でも朧げながら覚えているのは、初めての海外に心が浮かれていたからだろうか。日本史は好きだけど、地理には興味ない。そんな女子生徒の記憶に今でも残っているのだから、未知の地に対する期待度の高さに驚きを隠せない。

修学旅行の初日は、マレーシアに着いたのが夕方ということもあり、みんなでニョニャ料理を食べたあとにホテルへ。

2日目はバトゥ洞窟、モスク、マラッカをクラス単位で見学。3日目には行先ごとに別れて、2クラスごとに見学を行った。どこに行ったのかは全く覚えていないけど、仲の良い友達に勧められて、当時の彼氏とバスの座席が隣になったのを覚えている。

私は2組。彼は7組。バスが別々になると思っていたものの、運命的に同じバスになったことに、バカみたいに騒いだことを今でも覚えている。

そして、4日目には班ごとに別れて自由行動の時間。初めての土地に高校生だけを放つのを危惧してか、各班には現地の大学生が派遣された。

女子7人の私たちのグループには、男の大学生が。名前ははっきり覚えていないが、たしか”エドウィン”だった気がする。

名前を教えてもらったあとに、ジーンズの話になったからおそらく間違えてはいないだろう。

英語が得意な子が積極的に話しかけ、行きたい場所を案内してもらう。

「ここは人が多く、引ったくりが多いから気をつけて」

英語の成績が2だった私は彼の言葉を全く理解できなかったが、友達が意訳してくれたのを覚えている。みんなでカバンを前に抱え、日本との治安の違いにビクビクしながら百貨店に向かう。

というのも、他校の彼氏に渡すお土産やファッションに興味があるメンバーで構成されていたからだ。高校生にしては少し背伸びした目的地に、みな心を踊らす。

ここまでエドウィンとの会話に消極的だった私も、普段は立ち入らないような施設に浮かれていたのか、拙い英語で会話に参加した。

「My house is near」

マレーシアでもユニクロが人気という話題が上がったので、「私の家の近くにユニクロがあるよ」ということを伝えた。文法があっているのか分からないけど、知っている単語だけで会話を続ける。

彼は笑いながら話しを続けてくれて、なんとか会話がなりたった。

初めての異文化交流に嬉しくなったのを今でも覚えている。(この感動を糧に、英語を精進すればよかったと今では後悔せずにはいられない)

そうこうしている内に、お土産屋さんへ。

空きスペースにワゴンを広げているようなお店だったけど、チョコレートやマレーシアならではのお土産が並んでおり、さらに料金は良心的。

高校生の私たちにとっては、願ってもいないお店に到着した。

バス移動が多く、観光地巡りがメインであった旅行ではせっかく換金したお金を使う暇もない。そんな旅行だったから、このお店ではみんな財布のヒモが緩んだ。

私も例に漏れず家族や友人に渡すお土産をたくさんカゴの中に突っ込み、それでもお金が余る。そんな中でとあるスペースに目が釘つけになった。

そこには、洋服を着たクマのぬいぐるみが。

自分用のお土産も欲しかった私は、つい手を伸ばしてしまう。日本でも買えるかもしれないデザインではないか。

ぬいぐるみを持ち上げた瞬間、頭を過ぎるが、海外に行った証が欲しくてついにレジへと連れていっていた。ぬいぐるみには弱いのだ。

 

家に帰ってからも、じっとクマのぬいぐるみを眺める。

「マレーシア育ちの子か」

このクマのぬいぐるみを見るたび、マレーシアでの生活に思いを馳せる。

ホテルに併設しているスターバックスで名前を聞かれ答えたものの、なかなか聞き取ってもらえなかったこと。錫の加工工場で体験見学をしたこと。そして、あの百貨店。

何気なく買ったぬいぐるみであったが、旅行の思い出と直結していることを思い知る。

自分が好きなものをその土地で購入することで、思い出も詰まるということを知った。

 

それからと言うもの、貧乏旅行や時間のない旅行以外、海外に行くたびにぬいぐるみを購入することに。

高校の卒業旅行で行ったグアムでも、会社を辞めてから行ったパリ旅行でも、お気に入りの子を探してぬいぐるみを購入。

ショッピングモールでのひとり時間、「絶対そのぬいぐるみ好きだと思った」と友人に言われたことなど、些細な記憶も覚えている。

それほどまでに、好きなものと場所との繋がりは強いのだ。

私は今後も、海外旅行にいくたびにぬいぐるみを購入するだろう。忘れたくない記憶とともに。

思いの強いものを購入すれば、前後の記憶は刻み込まれる。

忘れたくない記憶があるとき、些細な思い出を忘れたくないときは、自分にとって大好きなものを一緒に購入するのが良いのではないかと思う。

人の記憶はすべて朧げ。だからこそ、見ただけで記憶を呼び戻す装置のような役割が必要なのではないか。

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